鎌倉彫とは、カツラやイチョウなどの木を用いて木地を成形し、文様を彫り、その上に漆を塗って仕上げた工芸品で、鎌倉市及びその周辺地域で作られたものをいいます。
鎌倉彫の起源は、江戸時代の文献に「鎌倉彫は四條帝の御宇、運慶の孫康運(こううん)の男康圓(こうえん)、陳和鸂(ちんないけい)と共に法華堂の仏具を彫りたるを始とす」とあり、遠く鎌倉時代までさかのぼります。
鎌倉時代、中国から禅宗とともに伝来した堆朱(ついしゅ)や堆黒(ついこく)などの影響を受け、工夫をこらしながら木彫漆塗りの技法で仏具を作ったのが、鎌倉彫の始まりです。室町時代には茶の湯の興隆とともに茶道具として大いに珍重されました。
これらの仏具や茶道具の制作に携わっていたのは仏師でした。しかし、明治新政府の公布した神仏分離令は、廃仏釈の運動を引き起こし、寺院の衰退から仏師の仕事は激減しました。
この頃、鎌倉では、多くの仏師が転職を余儀なくされる中で、二人の仏師が活躍します。一人は後藤齋宮(ごとういつき)、もうひとりは三橋鎌山(みつはしけんざん)でした。二人は仏像彫刻の技術を生かしながら、新しい活路を鎌倉彫に見いだし、今日の発展の基礎を築きました。
また、明治政府は政策に富国強兵、殖産興業を掲げ、国内産業を大いに奨励しました。明治十年代には内国勧業博覧会に連続して鎌倉彫を出展し、受賞の栄誉に輝いています。
鎌倉彫
商標登録 第5276777号
鎌倉彫は平成21年10月30日に商標登録しました
鎌倉地方に由来する木彫刻及び漆塗りの技法により、鎌倉市及びその周辺で生産された 盆・膳・皿・椀・重箱・箸・スプーン・木製ブローチ・木製の宝石箱・文箱・ペン皿・名刺盆・花器台・鏡台・引出し・文庫・木製壁掛など。伝統鎌倉彫事業協同組合にて、商標登録をいたしました。
鎌倉彫は昭和54年1月12日に伝統的工芸品に指定されました
一般の「伝統工芸品」などの呼び方とは別に、「伝統的工芸品」という呼称は、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で定められました。「的」とは、「工芸品の特長となっている原材料や技術・技法の主要な部分が今日まで継承されていて、さらに、その持ち味を維持しながらも、産業環境に適するように改良を加えたり、時代の需要に即した製品作りがされている工芸品」という意味です。